2026/11/02 14:27
昔の自分が、今の自分を助けてくれた。
2019年のラグビーワールドカップ直前。
どうしても自分で何か作りたいという気持ちから、一晩で生まれたラグビーボールバッグ。
売れるとも思っていなかったこのバッグが、いつの間にかR atelier & Co.を代表する商品のひとつになりました。
でも、作って良かったと思うのは、売れたことだけではありません。
たくさんの人と出会えたことです。
「昔、唾つけて磨いたなぁ」
バッグを手に取った50代から70代くらいのお客様が、懐かしそうに話してくださることがあります。
「高校生のとき、唾つけてボール磨いたなぁ」
その話を、隣にいる奥様に自慢げに話していたり(笑)。
帰り際には、
「唾じゃなくて、ワックスつけて磨いてくださいね」
なんて冗談を言ったりします。
強豪校でプレーした人も、そうでない人も、ラグビーをしていたという経験は同じ。
何十年経っても、ラグビーが好きなんですよね。
そんな会話ができるのが、うれしいんです。
ラグビー界の伝説が工房に
忘れられない出会いもありました。
松尾雄治さんです。
ラグビー界の伝説的な選手が、僕の工房に来てくださったんです。
バッグを手に取ってくださり、一緒に写真を撮って、サインまでいただきました。
今も使ってくださっているかは分かりません。
でも、自分が憧れていたラグビーの世界の方が、自分の作品を手に取ってくれる。
こんなこともあるんだなと思いました。
テレビに出たら売れるのか?
このバッグは、いくつかのテレビ番組でも紹介していただきました。
特に反響が大きかったのが『ぶらり途中下車の旅』。
5分程度の紹介だったと思いますが、放送後の2週間ほどは驚くくらいの注文をいただきました。
一方、別の番組でワークショップを紹介してもらったときは、ほとんど反響がありませんでした。
テレビに出れば売れるわけではないんですよね。
視聴者の年齢層と、昔の革製ラグビーボールへの懐かしさが合ったのかもしれません。
正直、今でも理由は分かりません。
型紙まで販売した理由
当時は完成品だけでなく、型紙やレザークラフトキットも販売しました。
自分で考えたデザインを公開するのは、もったいないと思われるかもしれません。
でも、僕は創業時から、もっと多くの人にレザークラフトを経験してほしいと考えていました。
自分で何かを作る面白さを知ってほしい。
ワークショップを続けているのも、同じ理由です。
2026年、大学チームカラーをイメージしたバッグが誕生
以前から、各ラグビーチームのカラーでバッグを作りたいと思っていました。
きっかけのひとつは、毎年息子と観戦している早明戦。
早稲田大学と明治大学の伝統の一戦です。
母校の応援で集まるおじさん4人組。ラグビー経験者はひとりもいない。
でも、試合を観て、終わったらみんなで飲みに行く。
早明戦が同窓会のようになっているんです。
そんな光景が大好きで、いつか早稲田の赤と黒、明治の紫紺と白でバッグを作りたいと思っていました。
そして2026年、ようやく完成。
同じカラーのミニサンダルチャームも作りました。
もちろん、大学やラグビー部の公式商品ではありません。
僕もラグビーファンのひとりとして、応援する楽しさを共有したい。
いつか公式商品になれたら最高ですけどね(笑)。
昔の自分が、今の自分を助けてくれた
中学生の頃、バスケットボールで5ファウル退場して、ラグビーを始めました。
そこから7年間、ほぼ毎日ラグビーをしていました。
将来革職人になるなんて、もちろん考えていませんでした。
でも何十年も経って、その経験がものづくりにつながり、たくさんの人との出会いにつながった。
ラグビーをやっていて良かった。
改めてそう思います。
ホビーとビジネスの間で
独立して10年。
僕はこれまで、本当にたくさんのものを作ってきました。
でも、売れるものを作ることと、自分が作りたいものを作ることは違います。
売れるものを作るのはビジネス。
自分が作りたいものを自由に作るのは、基本的にはホビーだと思っています。
ただ、それを販売しようとした瞬間にビジネスになる。
ラグビーボールバッグは、作りたいという気持ちから始まり、たまたま商売にもなった、本当にラッキーな商品です。
でも、こんなことはそう何度も起こりません。
何十個も思いついたものを作ってきましたが、今も定番として残っているのはほんのわずか。
じゃあ、売れるものだけを考えて作ればいいのか。
それも、なんだか違う気がします。
作りたいものがある。でも、材料費も時間もかかる。
工房を続けるには、利益も必要です。
僕の頭の中は、いつもそんなことで混沌としています。
それでも、何か思いつくと、やっぱり作ってみたくなる。
独立して10年。まだまだ作りたいものはあります。
これからも、そんなことを繰り返していくんだと思います。
R atelier & Co.
小花亮介

